JARDIN D'ETRETAT

海の香り、陽気な人々、光輝く太陽、新鮮な海の幸、息を飲むほどの絶景、その全てが詰まった場所が、ノルマンディー地方のエトルタです。印象派画家のインスピレーションの源ともされただけあり、その美しさは格別。フランス国内では、エトルタは最も美しい街の一つとして有名で、夏には多くの観光客が訪れる人気避暑地です。今回は、そんなエトルタの隠れ家的おすすめスポットの、レ・ジャルダン・デトルタ(Les Jardins d’Etretat)をご紹介します。

エトルタの隠れ家的おすすめスポット

«Summer», 2019 (写真右側), Gevorg Tadevosyan, アルメニア, ブロンズ, 鉄

エトルタは1〜2時間ほどで歩いて回れるほど小さな街。市役所前で駅からのバスを降りたら、海の方向に街やビーチがあるので、そちらに向かって歩いていきましょう。海を真正面に立ち、右手にある坂から崖を登って行くと見えてくるのがレ・ジャルダン・デトルタです。アーティスティックでフランス的な美しいガーデンは、エトルタに来たら必見です。

このジャルダンは、もともとMadame Thébaultというパリの女優にして印象派のクロード・モネの友人であった彼女の私有地でした。Madame Thébaultは、モネの絵画からインスピレーションを受け、レ・ジャルダン・デトルタの丘側の庭のデザインに活かしたと言われています。その後、ロシア人の有名風景建築家であるAlexander Grivkoはその歴史に惚れ、彼のチームによって再構築され、新たなデザインで2017年に一般向けにオープンされた庭です。このプロジェクトは、ヨーロピアン・ガーデン・アワードで「Best developpement of a historic park or garden」賞を受賞。ミシュランのグリーンガイドでは一つ星を獲得し、「Great Gardens of the World」のリスト入り、そして「Remarkable Garden」という称号を与えられています。

独特な世界観のコンテンポラリーガーデン

«Drops of Rain», 2016, Samuel Salcedo, スペイン バルセロナ, ​ポリエステル樹脂とアルミパウダーの混合

ジャルダン内に入ったらまず最初に目を引くのが、ユニークな現代アートの作品たち。レ・ジャルダン・デトルタは、ただのフレンチガーデンではなく、世界中の芸術家が手がけた現代アートとの融合が楽しめる、モダンな空間なのです。展示作品は、テーマや季節によって展示場所が変わり、その時々で違った表情を見せてくれます。

«Mobile Music 10%», 2019, Shuengit Chow, 香港, アルミホイル (ビール缶)

上の写真は、ビールの缶で作られた作品。自分の好きなビールの銘柄は見つけられましたか?そして、この作品が何を表現したかったのか想像できますか?この作品のテーマは、「私たちの周りにある最も一般的なものから、日常にある美しさを見つけること」だそう。このテーマから、どのような美しさが思い浮かびましたか?

ガーデンを異なるテーマごとに楽しむ

«Meditation», 2011, Dashi Namdakov, フランス, パティネーテッドブロンズ

レ・ジャルダン・デトルタは7種類の異なるテーマの庭から構成されています。印象、エモーション、ハーモニーなどがあり、それぞれに独特の植物やその剪定が施され、それぞれ全く違った雰囲気。上の写真は、禅をテーマにしたガーデン。その名の通り、「メディテーション」という名のコンテンポラリーアートの彫刻や、アジア風な竹を多く使った、人と自然のハーモニーを表現したガーデンです。この場に足を踏み入れた瞬間から、心がほっとして落ち着くような空間でした。

レ・ジャルダン・デトルタの一番の見所は、何と言ってもこの景色。渦巻き状の迷路のようなミステリアスな「印象」の庭を挟んで向こう側には美しい断崖を望むことができます。ここにはベンチがあり、座ってゆっくりと景色を楽しんだり、飲み物やスナックなどを楽しむことができます。何も食べ物や飲み物を持ってこなかった場合は、レ・ジャルダン・デトルタの入り口を入る前に、チケット売り場の裏手にある売店で購入できます。

一番フォトジェニックなのは、「エモーション」の庭。まん丸のボールに色々な表情が表現されている作品が、緑の中に点々と展示されています。これは、海とそこに住む生物たちの様々な表情やムードを表現しているそう。お気に入りの表情を探したり、それと一緒にインスタ映えする写真を撮ったりするのがおすすめ。

レ・ジャルダン・デトルタは、それぞれのテーマや作品だけでなく、やっぱり植物も魅力的。モダンな雰囲気のガーデンは、その多くがもともとノルマンディー地方にあった植物で構成されています。お花は白と青の二色だけを使用しており、それがまたシックで洗練された雰囲気。一つ一つのディテールにも注目しながら楽しめるので、何時間いても飽きない場所です。写真を撮るのにぴったりなスポットも多いので、カメラのご用意をお忘れなく！

O'bon Paris' tip

1. 先程お話したとおり、レ・ジャルダン・デトルタの入り口の裏側に、シャンパンからカクテル、ジュース、軽食などを購入できます。カクテルは、ノルマンディーやエトルタに因んだ名前がついたカクテルもあります。せっかくなら、エトルタの絶景をオリジナルカクテルとともに堪能してみてはいかがでしょうか。

2. レ・ジャルダン・デトルタでは、ダンスや、音楽、ヨガなどのイベントが開催されています。自然の中でのイベントは、特別素敵なものになるはず。最新のイベント情報はウェブサイトからご確認ください。

著者&撮影 - Yuka Ishihara